循環器病棟に配属されたばかりの人へ、結論から言います。
最初の3か月で覚えるべき略語・検査・薬は「50個」に絞れます。
病棟に貼られている一覧表を丸暗記しようとして頭がパンクした経験、ありませんか? 循環器領域は略語が多すぎて、最初は何が重要で何が後回しでいいのかさえわかりません。
この記事では、現役の循環器病棟師長が「これだけ最初に入れておけば申し送りが聞き取れる・先輩の指示が理解できる・急変で動ける」という50個に絞って解説します。勉強の順番も含めて整理したので、配属初日から使ってください。
私自身、配属されたころは循環器特有の略語がとにかく頭に入りませんでした。TRとかTBとかTF……申し送り中に聞き返す暇もなく、ひとまずうなずきながら受けるしかなかった。あの経験があるから、まとめて整理しておけばよかったと強く思います。この記事はそのときの自分へ向けて書いています。
申し送りを聞いていて最初に詰まるのが診断名の略語です。「APの方が〜」「UAP疑いで〜」と言われても、最初は全部が呪文に聞こえます。 以下の10個を最優先で入れてください。申し送りの9割はこれで聞き取れます。 入院から退院まで、何の処置が予定されているかを把握しないと動けません。病棟でよく飛び交う処置略語がこちらです。 PCI前処置で印象に残っている出来事があります。穿刺予定部位の動脈触知がわかりづらくて、リドカインテープをどこに貼るか迷い、緊張しながら対応したことがありました。略語と処置名は覚えていても、実際に目の前の患者さんに何をするかは、教科書通りにはいかないことの連続です。 心電図は最初から全部読もうとしないでください。まず「正常洞調律を体に染み込ませる」ことが最短ルートです。病棟でよく出てくる心電図略語・用語を10個に絞りました。 モニターの波形変化は、先輩から言われて気づくことも多いです。私自身、NSRだと思っていた波形がいつの間にかAfに変わっていたことがありました。指摘されて画面を見直して、初めて「あ、P波がない」と気づく。変化に気づく目は、正常をとにかく見続けることでしか育ちません。 薬品名を全部覚えようとしなくていいです。「この薬は何のために入っているか」の一言だけ、最初に入れてください。 循環器の薬で最初に「怖い」と感じたのは、心停止時に使うアドレナリンを初めて扱ったときです。手が緊張しているのに動かさないといけない。その後、止まらないVTの患者さんにアミオダロンを使用したとき、配合の手順に慣れていないうえに初回負荷を10分で終わらせないといけなかったため、先輩の指示を聞きながら必死でついていきました。薬の名前より先に、「この状況で何をする薬か」が体に入っていたから何とかなった、というのが正直なところです。 いざ、
① 診断名の略語|まず「何の患者さん」かわかるようになろう
略語
正式名(日本語)
一言メモ
MI 心筋梗塞 急性はAMI。超緊急 AP / UAP 狭心症 / 不安定狭心症 UAPは入院適応になりやすい HF 心不全 急性増悪はAHF。病棟の常連 Af / AF 心房細動 脳梗塞リスクと抗凝固管理がセット AFL 心房粗動 鋸歯状波形が特徴 VT / Vf 心室頻拍 / 心室細動 Vfはすぐ除細動。最重症 SSS 洞不全症候群 徐脈→ペースメーカー適応 AVB 房室ブロック Ⅲ度(完全AVB)は即入院 AS / AR / MS / MR 大動脈弁狭窄/逆流・僧帽弁狭窄/逆流 弁膜症の4種。TAVIはAS重症例 PE / DVT 肺塞栓症 / 深部静脈血栓症 SpO₂急低下+頻脈で疑う
VT・Vf・ⅢAVBは「見たら即ナースコール+先輩呼ぶ」の3つとして最初に体に入れてください。略語の意味より「これは緊急」という反応を先に作る。
② 処置・手術の略語|「次何が起こるか」がわかる
略語
正式名
看護師が覚えるポイント
CAG 冠動脈造影 造影剤→腎機能・アレルギー確認。前後の観察がある PCI 経皮的冠動脈インターベンション CAGから続けて行うことが多い。術後は穿刺部観察 ABL カテーテルアブレーション 不整脈の根治目的。術後に安静時間あり EVT 末梢血管インターベンション 下肢ASO(閉塞性動脈硬化症)に対して行う TAVI 経カテーテル大動脈弁置換術 重症ASの低侵襲手術。術後管理は特殊なので先輩に確認 TEER 経カテーテル僧帽弁修復術 MitraClipとも。MR重症例に増えてきた PMI ペースメーカー植込み 術後は閾値確認・植込み部位の感染管理 ICD 植込み型除細動器 VT/Vfへの自動放電機能つき。MRI制限あり CRT 心臓再同期療法 HFの両心室ペーシング。EF改善目的 CMD 冠微小循環障害 CAGで有意狭窄なしでも胸痛がある患者に疑われる
TAVIとTEERは実施施設がまだ限られており、プロトコルが病院ごとに異なります。術後観察のポイントは必ず自施設のマニュアルで確認してください。
③ 検査略語|「この数値が何を意味するか」がわかる
略語
何を見ている検査か
循環器での意味
BNP / NT-proBNP 心不全マーカー 数値が下がれば治療が効いている目安 トロポニン(cTnI/cTnT) 心筋逸脱酵素 AMI・心筋炎で上昇。高感度トロポニンが主流 CK / CK-MB 心筋・骨格筋の壊死 AMIのピーク推定に使う(経時的に測定) UCG / Echo 心臓超音波検査 EF・弁膜症・心嚢液の評価に必須 EF(LVEF) 左室駆出率 正常>50〜55%。HFrEF/HFpEFの分類に使う Cr / eGFR 腎機能 造影前・利尿薬使用中は必ず確認 PT-INR ワーファリン効果の指標 Af患者の抗凝固管理でほぼ毎日チェック ABG(動脈血ガス) 酸塩基平衡・換気評価 AHF・呼吸不全の重症度判断。看護師が採血する施設もある ABI 足関節上腕血圧比 0.9以下でASO疑い。EVT前評価に使う ホルター心電図 24時間心電図 不整脈の出現頻度・種類を後から確認できる
④ モニター心電図の略語|「これだけ」10選
略語・用語
意味
看護師が覚えるポイント
NSR 正常洞調律 P波→QRS→T波が規則正しく並ぶ「正常」。まずこれを体に入れる PAC 心房性期外収縮 P波の形が変わって早期に出る。単発は経過観察が多い PVC 心室性期外収縮 幅広いQRSが飛び出す。頻発・連発・R on Tは要報告 SVT 上室性頻拍 突然の頻脈。HR150〜200台。息切れ・動悸を伴うことが多い AVB(Ⅰ〜Ⅲ度) 房室ブロック(各度) Ⅰ度:PR延長のみ・経過観察。Ⅱ度:QRS間欠脱落・要注意。Ⅲ度(完全AVB):PとQRSが独立して動く→高度徐脈+即報告 ST上昇 / ST低下 心筋虚血・梗塞のサイン ST上昇はAMIの最重要サイン。胸痛と合わせて即報告 QTc延長 補正QT間隔の延長 薬剤性が多い。Vfのリスクになる。電解質(K/Mg)も確認 Asystole 心静止(直線) モニターが直線になったら即CPR。リード外れも確認する PM(ペースメーカー)スパイク ペーシング波形 スパイクの後にQRSが来るか確認。ペーシング不全は緊急 HR / RR間隔 心拍数 / R波間の距離 RR不整=Af疑い。HR>100頻脈・<60徐脈が基本判断
「名前はわからないが、さっきと波形が違う」と言える看護師が正しく育ちます。まず変化に気づく感度を上げることが、心電図学習の本質です。
⑤ 循環器でよく使う薬10選|作用を「一言」で覚える
薬名・種類
一言で言うと
看護師が見るポイント
フロセミド(ラシックス) 水を出す(利尿薬) 尿量・電解質(K低下に注意) ワルファリン(ワーファリン) 血を固まりにくくする PT-INR管理・出血徴候 DOAC(リクシアナ等) Af・静脈血栓の抗凝固 腎機能でDOAC選択が変わる ニトログリセリン(ニトロ) 狭心症発作を止める・血管を広げる 低血圧・頭痛に注意。使用後は必ず記録 βブロッカー(メトプロロール等) 心拍数を落とす・心保護 投与前にHR確認。喘息禁忌 ACE阻害薬/ARB 心不全・高血圧の心保護 高K・咳(ACE)に注意 SGLT2阻害薬(フォシーガ等) 心不全の予後改善(HFにも適応) 尿路感染・脱水・DKAに注意 ドパミン/ドブタミン 心臓を強く動かす(強心薬) 末梢点滴厳禁(血管壊死)・不整脈モニター アミオダロン 不整脈を止める(急性期VT/Vf) 半減期が極めて長い。副作用も多い薬 抗血小板薬(アスピリン・クロピドグレル) 血小板の凝集を防ぐ(PCI後のDAT) 出血リスク・自己中断は禁止と患者指導
ドパミン・ドブタミンは末梢ルートからの投与が原則禁忌の施設がほとんどです。自施設のプロトコルを必ず確認してください。薬の投与経路ミスは重大インシデントに直結します。
まとめ|最初の3か月でやること
「できる!看護師!!」
目指しちゃいましょう☆





